時論 「日中政府間交流と首脳会談の再開を」
2021年11月
時論 「日中政府間交流と首脳会談の再開を」
名古屋外国語大学名誉教授 日本日中関係学会副会長 川村 範行
(元東京新聞・中日新聞論説委員、上海支局長)
日中関係は当面、霧がかかったようで先が見えない。そんな中で、10月25日に第17回東京―北京フォーラムがオンラインで開催された。「不安定化する世界での日中関係と国際協調の修復-国交正常化50周年に向けて-」をテーマに、日中両国の有識者が率直に意見を交換した。
福田康夫・元首相が挨拶に立ち、「日中両国が緊張と対立を続ければ50年の努力が傷つけられてしまうかもしれない」と深刻な警告を発し、以下の三点を指摘したことが特筆される。
①対話と交流の再開と強化:首脳往来が途絶えて久しく、国民間の交流も減り、お互い相手への理解が足りない。
②お互い共通認識を持つ:人類と地球が危ない。人類運命共同体の中身を作る。2008年の戦略的互恵関係に関する共同声明では、両国はアジア・太平洋、及び世界の発展に向けて責務があると認めた。両国はどのような責務を果たすか、作業を進めるべきである。
③相手の懸念を和らげる:1972年の国交正常化共同声明では、紛争は平和的に解決されなければならないとうたっており、約束を実行することだ。
続いて、王毅国務委員・外交部長が挨拶で、以下の三点を挙げた。
①相互信頼の再構築:歴史認識や台湾問題で一線を越えたり、ルールを外すことは許されない。
②相互協力の促進:デジタル、スマート、排出制限など共通点がある。
③齟齬のマネジメント:一部係争を巡り、対話を通じ小異を残して大同につく。
新型コロナの影響で、日中間の政府外交がこの2年近く低迷している状況下で、東京―北京フォーラムは極めて貴重な民間外交を果たしたといえる。
岸田首相は習近平国家主席との初の電話会談で「建設的かつ安定的な日中関係の構築」を提案した。早期に日中政府間交流を回復し、対面での日中首脳会談を再開することである。菅前首相は対米偏重だったが、岸田首相には日米、日中のバランスある外交を推進することが何より求められる。
(2021年11月 記 、日中友好99人委員会会報2021年冬季号「巻頭言」より)