時論 客観的、理性的に日中関係を論じて30年
東海日中関係学会設立30周年記念・日中平和友好条約締結45周年記念シンポジウム
開会挨拶
東海日中関係学会会長・日中関係学会副会長 川村範行
(名古屋外国語大学名誉教授)
2023年5月13日
本日のシンポジウムに250名以上の参加申し込みをいただき、東海日中関係学会を代表して心より感謝申し上げます。本年は日中平和友好条約締結45周年、東海日中関係学会設立30周年の重要な年です。
日中関係を専門とする立場から見ると、日中関係は四段階で推移してきました。第一段階は、1972年の日中国交正常化と、1978の日中平和友好条約により、日中友好の時代が築かれました。第二段階は、1989年の天安門事件を境に日本人の中国を見る目が変わり、さらに2001年から5年連続して小泉純一郎首相の靖国神社参拝に中国が抗議して、日中非友好の時代になりました。そして、第三段階は尖閣諸島を巡る日中対立時代です。2010年の中国漁船衝突事件、2012年の国有化問題です。第四段階は、安倍晋三首相と習近平国家主席の首脳会談の積み重ねにより、「対立から協調へ」を合言葉に「日中新時代」に向かいました。しかし、米中対立の深刻化やウクライナ戦争の影響を受けて、日中関係は安全保障を巡り複雑な第五の段階に入ったのです。それまでは経済貿易が日中関係の重しになってきましたが、第五段階では経済安保を巡り日中経済はデカップリングのリスクに揺さぶられています。
東海日中関係学会は、日本日中関係史学会の東海支部として1993年に発足しましたが、その後、独自の自主活動を目指して1999年に東海日中関係学会と改称しました。日中関係を客観的、実証的に研究し、相互理解を深めることを掲げ、講演会やシンポジウム、公開研究会を30年間に計75回開催してきました。
特に、2000年代に入ると、ピンポン外交30周年、40周年、50周年や、国交正常化50周年などの大規模な国際シンポジウムを開催し、広く討議の場を提供しました。党派やイディオロギーに偏らず、自由に発言できるというのが当学会の大きな特徴です。
現在、当学会は三つの課題に直面しています。第一に、「強国」を目指す中国に対し、東アジアの不戦と平和をどう構築していくか。第二に、米中対立による経済貿易のデカップリングにどう対応するか。第三に、コロナで中断した日中間の相互交流と相互理解をいかに回復するかです。
客観的かつ理性的に日中関係の在り方を論じる本学会の役割はますます重要です。30年の実績の上に、新たな30年に向けて本学会の活動をどう進めるかが試されています。きょうは、宮本雄二・元駐中国大使に日中関係の在り方を提示していただき、次のパネルトークでは学会の30年と今後の方向性を討議します。
最後に、長く本学会を支援してくださった学会員の方々、及び共催や後援のご協力をいただいた団体、企業・大学の皆様方には深く感謝を申し上げます。
(2023年5月13日、名古屋市中村区の愛知大学名古屋キャンパスにて、記念シンポジウムを開催。
同年11月に学会30年史『東海日中関係学会設立30年の歩み』を刊行した。)