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日中国交正常化45周年記念 第7回中日関係討論会 (在北京)

2017/11/14

日中国交正常化45周年記念 第7回中日関係討論会 (在北京)
「国交正常化の原点に戻り、一帯一路・AIIBで日中協力を実現すべき」

日本日中関係学会副会長、名古屋外国語大学特任教授  川村 範行

1、はじめに


 東アジアの平和と安定には日中両国の良好な関係が不可欠である。しかし、日中両国は日中戦争を巡る歴史認識問題や東シナ海の領有権問題、台湾問題などの課題を抱えている。安倍政権の中国けん制外交に対し習近平指導部の対日政治不信感が交錯しているのが現状である。残念ながら、こうした現状は日中国交正常化共同声明の精神から逸脱している。最近になり日中関係改善の梃(てこ)として、日本が中国主導による21世紀シルクロード構想「一帯一路」とアジアインフラ投資銀行AIIBに早期に参加し、協力する道を模索する動きが出ている。これは日中両国の信頼醸成を促進し、将来にわたり日中関係を安定に導く可能性があり、評価できる。

2、国交正常化の原点


 (1)歴史認識問題 日中国交正常化共同声明で、日本側が「戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し、深く反省する」(前文)と表明し、中国政府は「中日両国民の友好のために、日本国に対する戦争賠償の請求を放棄する」(第5項)と宣言した。当時、周恩来総理は「中国人を苦しめたのは一握りの日本軍国主義者であり、大多数の日本人も一握りの軍国主義者の犠牲者である」という二分論を以て中国国民を説得した。両国指導者が大局に立って決断を下した貴重な政治文件である。両国政府ともこの前文、第5項を今こそ再確認し、特に日本政府は当時の精神を堅持し靖国参拝も控えるべきである。

 (2)領有権問題 同共同声明第6項で、「主権及び領土保全の相互尊重・相互不可侵、内政に対する相互不干渉、平等及び互恵並びに平和共存の諸原則の基礎の上に両国間の恒久的な平和友好関係を確立する。(中略)すべての紛争を平和的手段により解決し、武力又は武力による威嚇に訴えない」と、平和友好主義を謳った。日中両国政府はこの第6項を尊重し、島の問題について歴史的経緯を客観的に捉え、双方とも冷静に対処すべきである。
(3)台湾問題 同共同声明第2項で、日本政府は「一つの中国」を認定し、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であるという中華人民共和国の立場を十分理解し尊重する、と明記している。微妙な台湾問題を解決した文章である。日本政府はこの第2項を順守し、最近の「改名問題」や高官の台湾派遣の行為を慎むべきである。


3、一帯一路、AIIBによる日中経済協力の提言


 今年5月中旬に北京で開催された「一帯一路」国際協力フォーラムに向けて、直前の5月11日、谷口誠元国連大使、凌星光・福井県立大学名誉教授、川村範行を含む日本人有識者7名が連名で、東京の日本記者倶楽部において日中関係の抜本的改善を図るための10項目提案を発表した。骨子となる3項目を紹介する。
(1)日本は陸と海のシルクロード構想を日本にまで伸ばすよう中国に働きかける。;欧州、中東、中央アジア、東アジアを繋ぐ古代シルクロードの終点は日本であった。それは奈良・正倉院に貯蔵されている国宝資料からも証明される。日本も21世紀における経済戦略を作成し、中国主導の「一帯一路」戦略との連携を図り、日中両国間の経済的補完関係を絶えず発展させるとともに、第三国への経済的支援でも中国と協調していくことが望ましい。
(2)日本はアジアインフラ投資銀行(AIIB)に参加し、日中経済協力関係を強化する。;2016年1月に開業したAIIBは加入国がすでに70カ国を超え(5月時点)、その運営についての国際性と透明性は国際社会から高い評価を得ている。主要国でAIIBに参加していないのは米国と日本だけであり、日本は即刻加入すべきである。日本は、日本が主導してきたアジア開発銀行(ADB)と中国主導で開業したAIIBとの連携を仲介し、アジアの経済発展を促進するインフラ整備に中国と共に貢献すべきである。
(3)日中韓FTAと東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の早期実現を目指す。;環太平洋経済連携協定(TPP)がアメリカの脱退によって挫折する中、日中韓三カ国はFTAの交渉を加速化し、同時に他のアジア諸国と共にRCEPの早期実現に努力すべきだ。TPPでまとめられた内容はRCEPに活かすよう考えるべきだ。アジアが欧米と共に世界経済に対してリーダーシップを発揮する時期であり、そのカギとなるのは日中韓三カ国の連携である。



4、日本政府の対中姿勢の変化
安倍晋三首相は5月の「一帯一路」国際フォーラムに実力者の二階俊博自民党幹事長を派遣し、5月16日、北京の釣魚台国賓館で習近平国家主席が二階幹事長と会見した。日中首脳往来の実現を提案し一帯一路構想を評価する安倍総理の親書を、二階氏は習主席に手渡した。習主席は「歴史を鏡に未来に向かう精神に基づき、両国が歩み寄って関係を正しい方向に発展させたい」と前向きな発言をした。
その直後の6月5日、安倍首相は東京での国際会議「アジアの未来」で演説し、「中国の『一帯一路』の構想は洋の東西、そしてその間の多様な地域を結びつけるポテンシャルを持った構想だ」と述べて、初めて「一帯一路」構想を前向きに評価した。
さらに、①透明で公正な調達②経済性③財政の健全化の3条件を挙げて、「国際社会共通の考え方を十分に取り入れることで、一帯一路構想は環太平洋の自由で公正な経済圏に良質な形で融合していく」と主張し、日本主導の11ヵ国TPPと中国主導の「一帯一路」との融合を初めて提起した。
さらに、7月6日にドイツ・ハンブルクで開催されたG20で習主席と安倍首相が会談し、日中首脳間対話を強化し、関係改善を進める方向で一致。安倍首相は「一帯一路」を評価し、条件付きでの協力を伝えた。習主席は「日中関係を正しい方向に進めたい」と述べた。5月の「一帯一路」国際フォーラムを契機に、日中両国首脳間で「一帯一路」への協力連携について理解が進んでいる現れであり、日中関係改善への重要な原動力となりうる。


5、政治信頼性と国民感情の課題


 しかし、中国政府は、日中関係の改善を希望しながら「中国脅威論」を掲げる安倍首相の両面性(王毅外相)を指摘しており、両国政府間の政治信頼性の確立が前提となる。また、両国民の相手国に対する好感度の低下も問題であり、観光も含めて双方向で民間交流を活性化させる努力が必要である。


6、結論


 日本が「一帯一路」構想を正式に支援すると同時に、「ドアは開いている」という金立群AIIB総裁の姿勢に応えて早期にAIIBに加入し、ADBとAIIBの連携など中国と協力して、アジアのインフラ整備や経済社会発展を支援していくことが極めて重要だ。周恩来総理は新中国成立後の1950年代に「以民促官」の考えを提唱し、「人民外交」を展開した。21世紀の現在、東アジアの平和と安定のために日中両国間で「以経促政」を実現すべきである。

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